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【シン・仮面ライダー】あらすじとその感想(ネタバレあり)

シン・仮面ライダーは2023年3月18日に公開された庵野秀明監督による劇場用作品であり、シン・ゴジラシン・ウルトラマンに続くシン・シリーズの第三弾である。

個人的な仮面ライダーの原体験は仮面ライダーBLACK仮面ライダーBLACK RXであったが、初代ライダーなどもレンタルビデオで見ていたし、何よりも庵野秀明監督の新作ということで楽しみにしていた。

映画館で見た基本的な感想としては、物語として面白いかと言われるとそうでもないけれど、これはかっこいいシーンを楽しむ映画なのだとは思ったし、実際かっこいいと思うシーンはたくさんあった。

今回はそんなシン・仮面ライダーのあらすじを簡単に振り返りながら、映画についての感想をまとめようと思う。

以下深刻なネタバレがありますので、本編を見ていない人は注意してください。と言うか本編を見てから読むことを強くおすすめします。

シン・仮面ライダーのあらすじのポイントネタバレあり

シン・仮面ライダーあらすじのポイントを簡単にまとめると以下のようになるだろう:

あらすじのポイント
  1. 主人公は本郷猛(ほんごうたけし)。
  2. 彼はSHOCKER(ショッカー)の科学者 緑川博士の手によってバッタオーグ(バッタ怪人)に改造された。
  3. SHOCKERを裏切った緑川博士とその娘 ルリ子の手によって本郷猛はSHOCKERを脱出するが、クモオーグの追撃にあい緑川博士は命を落としてしまう。
  4. 緑川博士のルリ子を頼むという願いを叶えるため、本郷猛は仮面ライダーとしてルリ子を守りながらSHOCKERとの戦うことを決める。
  5. ルリ子と本郷猛は政府の機関と手を結び、すでにSHOCKERが開発したオーグの駆逐作戦を開始する。
  6. すでに確認されているオーグを殲滅したルリ子と本郷猛は、ルリ子の兄でチョウ(蝶)オーグであるイチローの作戦を阻止するべくSHOCKERの本部に乗り込む。
  7. しかし、イチローが開発した2体目のバッタオーグの反撃にあい、ルリ子と本郷猛は敗走。
  8. バッタオーグの執拗な追撃にルリ子と本郷猛は窮地に陥るが、ルリ子の機転によりバッタオーグの洗脳を解除することに成功し、バッタオーグ一文字隼人の追撃は終了する。
  9. 状況が好転したかに見えたのもつかの間、密かにルリ子達を追っていたカマキリ・カメレオンオーグの手に落ちルリ子は命を落とすカメレオンオーグは一文字隼人の手によって倒される
  10. イチローを止めてほしいというルリ子の願いを叶えるために、本郷猛と一文字隼人はイチローとの最終決戦に挑む。
  11. 強力なチョウオーグに苦戦するも、本郷猛の命と引き換えに、2人はイチローを止めることに成功する。
  12. 孤高を愛する一文字隼人ではあったが、ルリ子と本郷猛の思いを受け継ぎ、政府の機関と連携しながらSHOCKERとの戦いを続けることを決める。

シン・仮面ライダーではSHOCKERの正式名称はSustainable happiness organization with computational knowledge embedded remodelingで、訳すならば計算機知識に基づく改造を用いた持続可能な幸福追求組織ということになるだろうか。今回はその成立についても作中で言及されている:

SHOCKERを創設したのはとある日本人の大富豪が開発させた人工知能アイアイはその大富豪の人類をより良い道へ導く方法を見つけてほしいという命令を実現するためにSHOCKERを創設した(大富豪はその命令をした直後に自殺)。

問題となるのはアイが選んだ幸福追求の戦略であり、いわゆる最大多数の最大幸福を実現するのではなく、なにかかたよった人間を救済することをその戦略とした。つまり、圧倒的少数派たる性質をもってしまったものに特殊な力を与えることによって全体のバランスをとるという戦略である

圧倒的少数派になってしまったものとしてはありがたいことではあるのだが、結果的に多数派はその少数の存在が持っている強大な力によって命の危険や、自由意志を奪われる危険にさらされることになる。

政府機関としてはそれを阻止するためにSHOCKER殲滅作戦を発動している。

一方で本郷猛の行動原理はそういったものとは少々異なっており人々の願い、思いに応えることとなっている。このへんがなんともヒーローなわけ。

というわけで、ここからはシン・仮面ライダーを見た感想をまとめていこう。

シン・仮面ライダーの感想

人類補完計画再び!

今回のラスボス チョウオーグのイチローの目的は人々のプラーナ(魂)を一つにして起伏のない世界を実現することだったが、これってまさに新世紀エヴァンゲリオンゼーレがやろうとしていた人類補完計画に他ならない

ゼーレは人々を個人として成立させているATフィールドを取っ払うことによってそれを実現しようとしていたが、イチローやルリ子はどうやら仮想現実のような世界で人々の魂を一つにしようとしたようだ。

何れにせよそれが人々の幸福だと勝手に決めつけた男によって地球の人類は再び補完される危機にあったわけだが、本郷猛と一文字隼人の活躍によってそれは回避された。

少々悪意ある味方をすると、自分の個人的な不幸を理由に世界を変容させようとする勘違い世界系野郎が駆逐されたとも言えるだろう。それを庵野秀明監督がやっているのだから痛快である。

ただ、イチローはプラーナとしてのルリ子と対話することによって救われているフシもあるので駆逐されたというよりも誰かに寄り添ってもらうことによって適切なバランスを取り戻したという見方が正確かもしれない。そしてそれは、シン・エヴァンゲリオンで描かれたシンジくんそのものである。

シン・エヴァンゲリオン以降の庵野秀明監督が描こうとしているのはこういった福音なのかもしれない。

不滅のカメラワークと音響の魔力

シン・仮面ライダーを見て最初におっ!と思ったのはライダーのそれこそ初登場シーンであった。

何故か崖の上に現れたライダーに一気にカメラの焦点があうシーンはまさにあの頃のライダーそのものであったし、使われた例の効果音もあいまってかっこいい~!と素直に感じた

また、下からのあおりでライダーや怪人が前宙なんかをするシーンに関しても、あの画角が持つパワーを改めて感じさせてくれた。できることが少ない時代に頭を捻って考えた工夫だったのだな~としみじみと感じられたし、早い話がかっこよかったわけである。

さらに音響の魔力というものも強烈に感じさせられた。

仮面ライダーで使われていた音楽、効果音が流れるだけであの頃に一気に引き戻されてしまう。私は初代ライダーを現役で見ていたわけではないのだが、レンタルビデオで見ていたのは幼稚園から小学校低学年の頃だったので、やはりある種のノスタルジーの源泉となっているということが再確認させられた。

というもは何故あれほどまでに人の心を動かすのだろうか?全くもって不思議である。

ライダーキックとサイクロン号

シン・仮面ライダーで気合が入っていたのはやはりライダーキックサイクロン号だった。

昭和ライダーのライダーキック最大の弱点はどうしても当たりそうに見えないことであった。というよりもどういう軌道でキックが実現されているのかがいまいちわからない。

しかし今回のライダーキック間違いなく命中するライダーキックだった。そしてかっこよかった。

命中するライダーキックとして私が強烈に覚えているのは仮面ライダーカブト回し蹴りだった。放送当時はいい年になっていたので2,3話見て終わってしまったが、第一話で回し蹴りを見たときにはこれならあたる!と感動したことを憶えている。

そしてライダーキックよりもかっこよかったのがサイクロン号

尻から火を吹いている姿は若干可愛らしかったが、作中随所で描かれたサイクロン号の疾走シーンはその美しい画角もあり非常にかっこよかったし、仮面ライダーは孤高に疾走するライダーなのだと再認識することができた。

孤高の物語ではなく受け継ぐ物語

ここら辺で少々物語についても言及しておこう。

仮面ライダーというヒーローの持つかっこよさに孤高というものが挙げられと思う。しかし今回のシン・仮面ライダーはそこを強調するのではなく、むしろ人々の願いを受け継ぐ存在として描かれることによってその孤高性が薄まっている

実際以下のように本作のライダーは人々の思いを受け継ぐ存在となっている:

  1. 本郷猛が仮面ライダーとして戦うことを決めたのはルリ子を頼むという緑川博士の願いを受けてのことだった。
  2. イチローの計画を阻止しようとしたのもルリ子の願い。
  3. 一文字隼人は本郷猛とルリ子の思いを受け継いで戦いに身を置くことを決めた。

一文字隼人が本郷猛と対話しながらサイクロン号で疾走するシーンはグッとくるものだった。ラストがあの様になったことを踏まえても、このシン・仮面ライダーっは人の思いを受け継ぐことの意義を描いた作品ということができるのではないだろうか。

タチバナタキの謎

シン・仮面ライダーにはシン・シリーズの常連 竹野内豊と斎藤工が政府機関の人間として登場。サソリオーグが殲滅される様子を見つめる竹野内豊の表情は最高に笑えた(シン・仮面ライダー唯一のねらったシーンだっただろうか)。

映画を見ている側としては2人の名前なんてまったく気にかけていなかったと思うのだが、その名前がわざわざラストで明かされ、竹野内豊がたちばな、斎藤工がたきであることがわかった。

さて、立花瀧といえば新海誠監督の君の名はの主人公である。

でだ、そういうところまでは思い至ったのだが、何故その名前がラストで明かされたのかがわからない。あの2人になにか君の名は要素があったのだろうか。それとも全くそういうことと関係がないのだろうか?

何れにせよわざわざ名前が明かされた理由について仮説を立てることすらできなかった。わかる人がいたらぜひとも教えてもらいたい。

シン・仮面ライダー
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