「秒速5センチメートル」は2007年に公開された新海誠監督による劇場用アニメーション作品である。
今回は「秒速5センチメートル」の登場人物と声優を振り返りながら、それぞれの魅力や物語について考えていこうと思う。「秒速5センチメートル」の登場人物はどんな人々だったのだろうか?
以下の文章では不意にネタバレが挟まれますので、その点はご注意ください。
「秒速5センチメートル」の登場人物と声優
遠野貴樹|声優:水橋研二
遠野貴樹(とうのたかき)の基本情報
物語の主人公。小学3年生から会社員そしてフリーランスとして独立する時代までが描かれる。
第一話と第二話メインストリームは貴樹周辺の恋愛模様となっており
- 第一話「桜花抄」では幼なじみの篠原明里との出会いと別れ
- 第二話「コスモナウト」では同級生である澄田花苗の貴樹への片思いの終焉
が描かれている。いずれもいわゆる「悲恋」であり大団円を迎えるものではない。更に第三話「秒速5センチメートル」では覚めきった関係となった交際相手から貴樹はメールで別れを告げられる。
このように貴樹周辺の恋愛模様は燦々たるものであり、なんとも鬱々とした空気が流れている。
しかし・・・そういった恋愛模様を排除して考えると「秒速5センチメートル」という作品は、貴樹が新たな一歩を踏み出しフリーランスとして独立を果たすという素晴らしいエンディングを迎える。
「秒速5センチメートル」は「桜の花びらの落ちる速さ」として物語の始まりとともに提示されるものだが、その実「それでもなお懸命に生きた人々の目に見えない歩み」の速さでもある。
第一話、第二話においても懸命に少しずつ歩みを進める若者の姿が描かれている。
その歩みがなにかに結実するまではとてもしんどいものであるので、「秒速5センチメートル」も一貫して鬱々としているが、我々は物語のスタートとエンディングで描かれる美しい桜を忘れてはならない。あの桜を拝めるのは「それでもなお歩みを止めない人」だけである。
声優の水橋研二さん
声を担当したのは俳優の水橋研二さん。多くの映画、ドラマに出演している方だが、アニメーションの声優という観点では「秒速5センチメートル」の遠野貴樹が現状唯一であるようだ。
篠原明里|声優:近藤好美/尾上綾華
篠原明里(しのはらあかり)の基本情報
第一話「桜花抄」のヒロイン、貴樹の初恋の相手。
転校した都内の小学校で貴樹と同級生になる(貴樹も転校組)。不思議と気のあった貴樹と明里は同級生として進行を深めていくが、小学校卒業と共に明里が栃木の中学校に引っ越すことになり離れ離れになってしまう。
貴樹と文通を続けていたものの、時の流れとともにそれもなくなり、二人は別の人生を歩むこととなる。
第三話「秒速5センチメートル」では婚約した明里が描かれる。貴樹が会社をやめ新たな一歩を踏み出す一方で、彼女も結婚という硬いで新たな一歩を踏み出していた。
きっと篠原明里にも「秒速5センチメートル」本編では描かれなかった苦難の日々があったに違いない。
声優の近藤好美さんと尾上綾華さん
声の担当は、第一話は近藤好美さん、第三話は尾上綾華さん。現在近藤さんは芸能活動はしていないようだが、新海監督が制作した信濃新聞のCMでも起用されている。尾上綾華もモデル活動をしていたが現在では芸能活動はしていないようである。
澄田花苗|声優:花村怜美
澄田花苗(すみだかなえ)の基本情報
種子島の高校に通う高校3年生。中学生の時に転校してきた貴樹と出会いそれからずっと片思いを続けていた。
高校3年生になると、部活を終えた貴樹と一緒に帰宅するようになったが、その関係はなかなか進展しなかった。
第二話のラストで、勇気を振り絞って貴樹に告白しようとしたが、結局実現しなかった。
なんとも健気な姿を見せてくれた花苗だったが、さすがの貴樹も彼女の気持ちに気がついていただろう。そして・・・余裕をぶっこいていた。
まだ明里のことについて踏ん切りがつかない状態だったということだろうが、送りあてのないメールなんか書いている暇があったら花苗のことをもう少しきちんとすべきだっただろう。
花苗も花苗でこんな奴のどこが良かったのだろうか?なにやら所在のない雰囲気がミステリアスで良かったのだろうか。こっちから言わせれば単に引っ込み思案なだけだったともうが、花苗も面倒な男に惚れてしまった。でも・・・そんなもんかな。人をすきになるということは。
声優の花村怜美さん
声を担当したのは声優の花村怜美さん。本作以外にも、「東京マグニチュード8.0」の小野沢未来、進化真監督の短編アニメーション「だれかのまなざし」で岡村綾を演じている。
水野理紗|声優:水野理紗
水野理紗(みずのりさ)の基本情報
第三話「秒速5センチメートル」に登場した貴樹の交際相手。
なにやら不穏な空気を漂わせて登場したのだが、案の定、彼女は貴樹に「1000回もメールをやり取りして、たぶん心は1センチほどしか近づけませんでした。」というメールを送り、別れを告げる。
あんな二人にも楽しい日々があったと信じたいが、どうにもそれが想像できない。
「1000回もメールをやり取りして」とあったが、お互い忙しくてメールでしかコミュニケーションが取れない状況が続いていたのかもしれない。「直接会う」という習慣がなくなっていたため、最後の別れもメールだったのだろう。
そう考えると「合わなかった」というよりは「出会ったタイミングが悪かった」ということかもしれない。
貴樹が会社をやめた後に出会うことができたら、もう少し良い日々があったのではなかろうか。彼女にも晴れやかな日々が訪れることを祈るばかりである。
声優の水野理紗さん
声を担当したのは声優の水野理紗さん(キャラクターと同姓同名)。新海作品の常連であり、「雲のむこう、約束の場所」では笠原真希、「星を追う子ども」の池田先生、「言の葉の庭」ではアナウンサー役を演じていた。
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