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「君の名は。」は、2016年に公開された新海誠監督による劇場用アニメーション作品である。公開当時私はすでに「ほしのこえ」、「雲のむこう約束の場所」、「秒速5センチメートル」、「星を追う子ども」、「言の葉の庭」を見ており、基本的には新海作品ファンになっていた。それでもなお劇場用の特報を見るに「入れ替わりの物語」であることは明らかで「新海さん、『入れ替わりの物語』は今の俺にはきついですよ~」と思い、公開初日に見に行くことはなかった。
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そうしているうちに「君の名は」は大ヒット作品になっており、天の邪鬼的な内面が姿を現したものだからいよいよ劇場から足が遠のいたが「見ないわけには行かない」という思いで、劇場公開から1ヶ月を過ぎたことに見に行った。今ではいい思い出だし、「君の名は」は私にとってとても好きな作品となった。毛嫌いせず見に行ってみるものである。
さて今回はそんな「君の名は」のあらすじと2つの考察ポイントについてまとめようと思う。ただ、あらすじと言っても全部話してしまうので、ネタバレが嫌な人は途中まで読んで本編を見てください。
「君の名は」のあらすじ(ネタバレあり)
入れ替わりの物語
2016年のある朝、高校2年生の立花瀧(たちばなたき)が目覚めると、そこはいつもと違う部屋だった。そればかりか、鏡を見ると自分の姿は見たこともない女の子になっていた。夢と現実とも取れない不思議な一日を滝は過ごすことになる。
一方同じく高校2年生の宮水三葉(みやみずみつは)も見慣れない部屋で目を覚ます。彼女は男子高校生になっていた。三葉はその状況に困惑するものの、外に出てみると、そこは三葉が憧れていた東京であった。
三葉にとってはまさに夢のような時間で、友人とのカフェでの食事やレストランでのバイトなど、困惑の中にありながらも「夢ならなんでもあり」の精神で状況を楽しんでいた。そんなバイト先で三葉は奥寺ミキ(おくでらみき)という先輩に出会う。少々ガラの悪い客に絡まれた三葉を助けてくれたのだった。三葉が男子高校生のスマホを確認すると、どうやらその少年は奥寺先輩に好意を寄せているようだった。
滝も三葉も激動の一日を終えて、眠りにつく。
目覚めた滝はもとの男子高校生に戻っていたが、どうも周りの様子がおかしい。高校の友人からは「バイトの生き方分かるか?」と聞かれ、バイト先の同僚からは奥寺先輩にかんする「抜け駆け」のそしりまで受けてしまった。なにか奇妙なことが起こっていることに気づいた滝は、スマホのカレンダーを調べた。そこには見に覚えのない日記が並んでいた。
一方目覚めた三葉も、どうやら自分が学校で起こしたらしい幾多の「武勇伝」を聞かされることになる。その上学校の先生からは「今日は名前を覚えているんですね」と言われる始末であった。そんな中で、授業中にノートをめくるとそこには「お前はだれだ」の文字があった。
かくして2人は、お互いに夢の中で入れ替わっていたことを知ることとなった。
2人は入れ借りによって発生するトラブルを避けるために様々なルールを取り決める。自分たちに状況にある種の危機感を抱きながらも、2人はそれを楽しんでもいた。滝は三葉の学校で武勇伝を生み続け、女子生徒からラブレターをもらうまでに至る。一方で三葉も日常生活を楽しみながら、滝が思いをよせる奥寺先輩とどんどん距離をつめ、デートの約束まで取り付けていた。
入れ替わった三葉による悪行が進行する中、滝は妹の四葉、祖母の一葉とともに宮水神社の御神体を訪れることとなる。宮水神社は糸守町という町にある三葉の実家であり、三葉と妹の四葉は巫女として神楽を舞うこともあった。その日は2人が巫女として作った「口噛み酒」を御神体に奉納する日であった。神社の御神体は山の頂上にある巨石を積んで作られた建築物の中に祀られている。祖母によるとそこは「あの世とこの世の間の世界、幽世(カクリヨ)」であるという。御神体が奉られている「彼岸」から帰るには「2人の半分」である「口噛み酒」を奉納しなければならない。滝は無事に口噛み酒の奉納を終えて山を降りた。
目が覚めると滝はもとに戻っていた。しかしその日は三葉勝手に取り付けた奥寺先輩とのデート日であった。大急ぎで準備をし、待ち合わせ場所に向かう滝。彼は三葉が用意してくれた「虎の巻」を利用しつつ、なんとかデートをやり遂げた。しかし、昼に始まったデートは夕食前に終了し、滝と奥寺先輩は別れた。「あなたは昔私のことが好きだったでしょ?そして今は別に好きな人がいるでしょう?」という奥寺先輩の言葉を噛み締めながら滝の手は自然とスマホに伸びていた。そこに記録されていた三葉の「緊急連絡先」に滝は電話をかける。
ひとりの男子高校生の恋が終わりを告げているころ、三葉は宮水神社の祭りに友人らとでかけていた。その日は祭り以外にも「ティアマト彗星の最接近」という一大イベントを控えており、糸守町だけでなく、世界中の人々が空を眺めていた。糸守町の空には美しいティアマト彗星がその尾を引いていた。
滝がかけた電話に三葉が出ることはなかった。そればかりかその日以降、2人の入れ替わりが起こることはなかった。
糸守町の悲劇
滝は三葉に会いに行くことを決める。三葉の住む街がどこにあるか分からなかったが、奥寺先輩とのデート訪れた写真展に偶然三葉の町らしい写真を滝は見つけていた。どうやら三葉の町は飛騨にあるらしい。滝は記憶を掘り起こしながら三葉の町を描いた。その絵を持って、滝は飛騨に向かった。その度は友人のひとり藤井司(ふじいつかさ)とのふたり旅になるはずだったのだが、どこで聞きつけたか待ち合わせの場所には奥寺先輩もいた。
滝は必死に三葉の町を探すが、司と奥寺先輩は完全に物見遊山であった。探せど探せど三葉の町は見つからなかったが、不意に立ち寄ったラーメンの店主が滝の絵に反応した。その町は「糸守」ではないかという。その言葉に司と奥寺先輩はとっさに反応した。なぜか滝だけは大切なことをまだ思い出せずにいるらしい。
店主のはからいで、三人はその町に向かう。たどり着くとそこには「かつて糸守町だったもの」が存在していいた。
ティアマト彗星が最接近したあの日、糸守町にはその片割れが衝突し、町もろとも多くの命が奪われていたのだ。日本で知らないものがいないはずのその大災害は3年前に発生していた。
滝はここに来てようやく自分が3年前の三葉と入れ替わっていたことを知る。それとともに、懸命に探し出そうとしていた三葉がすでにこの世にいないという耐え難い現実を受け入れなくてはならなかった。自分にできることはもうないのか。どうしようもない現実を前に、滝は最後のあがきに出る。
翌朝滝は再び宮水神社の御神体に向かう。「三葉の半分」である「口噛み酒」に最後の望みをかけたのだった。
御神体にたどり着き、三葉の口噛み酒を口に含む。そして滝は不思議な時間の旅をする。その時間の旅の中で滝は、糸守町の歴史と宮水神社の歴史、三葉の家族、そして三葉の秘密について知ることとなる。その時間の旅の先に、滝は三年前の三葉と再び入れ替わることに成功した。
滝は隕石の衝突から町を守らなくてはならない。滝は三葉の友人らと町の放送ジャックと電力施設の爆破計画を立てる。強制的に町の人々を避難させることを考えたのだ。滝は悲劇を止めることができるだろうか?
そして未来へ
電波ジャックの作戦を準備しつつも、確実な町民避難のために滝は町長である三葉の父に直談判に行った。当然のことながらその反応は冷淡なもので、世迷い言として一蹴されてしまった。自分の力では町長を説得できないと悟った滝は、再度三葉との入れ替わりを画策する。幽世である山の頂上に行けば、三葉に会えるかもしれない。滝は懸命に走った
同じ頃、御神体の前で三葉が目覚める。何か不思議な力に惹かれるように三葉は御神体を後にする。そこで三葉は隕石衝突によって壊滅した糸守町の姿を目撃した。その姿に衝撃を受ける三葉だが、そこに滝の気配を感じ取る。
山の頂上で2人はお互いを探し走る。その時黄昏の空が辺りを包む。黄昏時に2人は再会を果たした。
そこで滝は隕石の衝突を三葉に伝え、町長の説得を託す。不意に訪れた黄昏の終焉に再び2人は引き裂かれるが、三葉は懸命に走った。
そんな中で、もともと計画していた電波ジャック作戦が開始される。やはりその効果は限定的であり、町長側に作戦がバレたこともあり人々の避難は中断してします。やはり父を説得するしかない。滝との約束果たすために懸命に走った三葉はようやく町長室にたどり着いた。
・・・・・・2021年10月、滝はまだ就活の最中だった。友人はバンバンと内定を取っていたが、滝の就活の状況は芳しくなかった。
そんな苦しい状況の中、滝は何か物足りなさを感じていた。それは単に内定が取れない事に対する不満に過ぎなかったかもしれないが、その漠然とした思いは滝をしばり続けた。
そんな時に滝は奥寺先輩と再会を果たす。それは5年前の不可思議な飛騨への旅を思い出させた。ある時期糸守町で起こった災害に酷く取り憑かれていたこと、わざわざ飛騨の地まで旅をしたこと。理由は覚えていないが奥寺先輩と司は先に東京に帰ったこと。
隕石が衝突したその日、糸守町では緊急の避難訓練が実施され、奇跡的に町民の命は救われていた。当時は町長の奇妙な経歴もあいまった、ある程度メディアを騒がせていた。そんな記事を滝は必死に読み漁っていたのだ。しかしその衝動がどこから来るのか滝には分からなかった。
そんな物足りない日々の中で、滝はひとりの女性と歩道橋ですれ違う。滝はその存在に何かを感じ振り開けるが、滝の目に映るのはその女性の後ろ姿だけだった。
春になり、無事に就職を果たした滝は社会人としての変わらない日々を送っていた。そんないつもの通勤電車、混み合う電車のドア近くに滝は陣取っていた。不意に電車が並走する。そこに滝はある女性の姿を見出す。彼女もこちらをじっと見つめていた。
滝は自分が何失ってしまったのかを思い出した。次の駅で電車を降り走り出す。それは滝を見つめていた女性も同じであった。
お互いの姿を探す2人は神社近くの階段で再会を果たす。それでもなお最後の勇気が出せず2人は再びすれ違ってしまうが、滝は勇気を振り絞って振り返る。そこにはこちらを見つける女性の姿があった。
2人は自分たちが忘れてしまった大切なものを思い出した。それは「君の名前」であった。
以上で「君の名は」のあらすじは終了です。極めて端折っているし、「君の名は。」は映像作品なので、まだ見たことのない人はぜひとも一度鑑賞してみてください。
それでは続いて「君の名は」の考察ポイントについて。
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「君の名は」の考察ポイント
市長の出した避難命令
「君の名は」という作品を一言で述べるならば「時空を超えて世界を救う話」ということになるだろう。滝が救いたかった命は基本的には三葉のみだが、彼らが選んだ道は町の人々全員を救うことだった。半分は三葉なのだから当然である。しかし街の人々を救うためにはどうしても三葉の父である町長の命令が必要だった。
最終的に三葉と滝は町長に避難命令を出させることに成功するが、なぜ町長は避難命令を出したのだろうか?
少なくとも滝がその中に入っている三葉が町長に依頼したときには見事なまでに一蹴された。滝としては落胆しただろうが、自分の娘が「隕石が落ちてくる!」と言っただけで避難命令を出す町長がいたらその方が問題である。でも、最終的に町長は避難命令を出したのである。それはなぜだろうか?「君の名は」を見た人が何かしらの疑問を持ちながら、ペンディングにしている問題の1つだと思う。この件関して私が考えたことを以下の記事にまとめている。
ぜひとも皆さんの考えと比べてみてください。色々な考え方があるはずなので。
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ラストで再開する三葉と滝
「君の名は」の公開以前にすでに新海誠作品を好きになっていた私のような人にとって、わずかに違和感があったのはラストのあり方だろう。「君の名は」以前の新海作品には、何かしら「離別」や「喪失」が通底していたと思われる。「言の葉の庭」で明確にシフトチェンジしたものの、ラスト直前の「高架橋ですれ違う三葉と滝」を見たときに「ここでラストだ!」と思ったのは私だけではないだろう。しかし、結果的に三葉と滝は再会を果たす。
もちろん「ラストで2人が再開しないほうが良い」という判断であっているのだけれど、私はあのラストが良かったと思っているし、あのラストでなくてはならなかったとも思っている。なぜ「君の名は」のラストで2人は再会を果たすのだろうか?そのことに付いて以下の記事にまとめている。
自分の意見と比べてみてください。
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