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かぐや姫の物語】登場人物&声優情報一覧とキャラクター考察

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「かぐや姫の物語」は2013年に公開された高畑勲監督による劇場用アニメーション作品である。

今回はその登場人物と声優を振り返りながら、各々の登場人物の物語を考えようと思う。「かぐや姫の物語」の登場人物はどんな人々だったのだろうか?

以下の文章では不意にネタバレが挟まれますので、その点はご注意ください。


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かぐや姫の物語」の主要登場人物と声優一覧

名前 年齢 声優

かぐや姫

0~20歳?[1]朝倉あき

翁(おきな)

50~70歳?[2]
地井武男

嫗(おうな)

? 宮本信子

捨丸(すてまる)

13歳~[3]高良健吾

女童(めのわらわ)

? 田畑智子

相模(さがみ)

高畑淳子

御門(みかど)

中村七之助
[1]
映画本編では明確な言及はない。原作の「竹取物語」においては翁が「かぐや姫を養ひたてまつること二十余年になりぬ。」と語っており、20年ほど育てていたことになっている。また、映画の中盤で登場する炭焼の老人が捨丸たちが10年は戻ってこないという発言をしているが、物語のラスト付近で捨丸達山に帰ってきているため、それくらいは人の世にいたことになる。あとはその前にどれほどの時間があったかだが、個人的には結構短く感じている。10年いたようには思えない。
[2]
こちらも本編において明確な言及はない。原作の「竹取物語」においても「翁、年七十に余りぬ。」、「翁、今年は五十ばかりなり」と50歳と70歳の2種類の言及がなされており、確定していない。映画本編の描写からは高々50歳という感じはする。
[3]
絵コンテによると初登場時は13歳となっている。

登場人物と声優の基本情報とキャラクター考察

かぐや姫|声優:朝倉あき/内田未来(幼少期)

かぐや姫の基本情報

物語の主人公かぐや姫。その成長の速さから、幼少期は近場の子どもたちから「タケノコ」と呼ばれていたが、翁はそれが不服で頑なに「姫」と呼んでいた。

かぐや姫は原作同様にもともと月の民であるが、何かしらの「罪」を月で犯し、その「罰」として地上に送り込まれたことになっているようである。かぐや姫の犯した「罪と罰」については、個人的に考えたことを以下の2つの記事で詳しく書いている。

かぐや姫の物語」で「姫が犯した罪と罰」とは何だったのか?「かぐや姫の物語」は2013年に公開された高畑勲監督による劇場用アニメーション作品である。残念ながら高畑監督の遺作となってしまった本作品...
かぐや姫の物語」で、かぐや姫は罪も犯していないし罰も受けていない?前回は「かぐや姫の物語」における「姫が犯した罪と罰」についての記事を書いた。そこでは、かぐや姫が本当に罪を犯し、罰を受けたという前提で考...

「かぐや姫の物語」のキャッチコピーは「姫の犯した罪と罰」となっており、鈴木敏夫さん(作品のプロデューサーは西村義明)はこれで売り出そうと躍起だったようだが、とうの高畑監督は「途中からそういう話ではなくなった」とこのキャッチコピーには否定的だったようだ。

実際本編を見ると「罪と罰」という観点よりも「望まぬなにかに翻弄される女性の姿」が描かれている。

かぐや姫(タケノコ)は地球そのものが持つ複雑さや循環を愛していた。しかし、「人の世の幸せ」を享受させようとする翁の空回りによって、彼女は貴族社会の好奇の目に苦しめられることになる。それでも翁のためにとかぐや姫は頑張ったが、帝の強引な求愛に心が折れてしまい月に帰ることになったのである(ここは原作と真逆)。

かぐや姫の心中を思うとなかなかにしんどい映画なのだが、二階堂和美が手掛けたエンディングテーマ「いのちの記憶」のおかげでなんとか救われた気になることができるようになっている。まさに名曲。

声優を努めた朝倉あきさんの苦難

「かぐや姫の物語」は「プレスコ」という手法で声が収録されている。これはアフレコの逆で、絵が出来上がる前に声優が声を吹き込むことになる。これは高畑監督の作品では一般的な方法で、「おもいでポロポロ」や「平成狸合戦ぽんぽこ」でも用いられている。

個人的には映像に合わせなくていいからプレスコ最高じゃんと思っていたのだが、「かぐや姫の物語」の制作ドキュメンタリーを見ると必ずしもそうとも限らないようであった。

物語の終盤、かぐや姫は帝の求愛を拒んだ瞬間に月への帰還を願ってしまった。そのために月からの使いが来ることになるのだが、かぐや姫はこのことを悔いて「帰りたくない」と媼の前で本音を漏らす。この「帰りたくない」のニュアンスがどうも監督の思惑通りになっていなかったらしい。

「かぐや姫の物語」の主要キャスト、かぐや姫、翁、媼の声優を担当した朝倉あき、地井武男、宮本信子は台本読み合わせを事前に行っている。この段階からすでに「帰りたくない」のニュアンスにはなにやら思うこところがあったようだが、本番ではその違和感を払拭すべく何度もリテイクをしていた。

どうやら「帰りたくない」というセリフが外に発散している状況になっているのが不満だったようで、もっと内省的というかつぶやくというか、誰かに聞かせるようなものにはなってほしくなかったということなのだろう。

ただ、シーンとしてはある種の見せ場になっているので、発散してしまうのは無理からぬことだったとも思う。そういうところで抑えていくというのが、難しいところなのだろう。

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翁(おきな)|声優:地井武男

翁の基本情報

翁。かぐや姫を地上で初めて確認した重要人物であり、その後かぐや姫の育ての親ともなった存在。

原作の「竹取物語」では、最終的にかぐや姫が帝という大切な存在を発見するきっかけを作った存在とも言うことができるが、「かぐや姫の物語」では「空回りに空回りを重ねてかぐや姫を不幸のどん底に叩き落とした張本人」という事になっている。

しかしそれは結果論に過ぎず、当時の情勢を考えるならば翁の判断は至極まっとうなものである。

また、良かれと思って空回るのは夜の親の常であって、娘のこととなると父親が、息子のこととなると母親が、それぞれ空回り続けることになる。翁の姿もそんな親のどうしようもない性を映し出したものだったのだろう。

声優を務めた地井武男さんの苦難

翁の声優は地井武男さんが担当しているのだが、なかなか役作りには苦労があったようである。役作りのために高畑監督に「かぐや姫の物語」についての質問を知るためにジブリを訪れていた。

その時の地井さんの「結局この作品は地球を肯定しているのか?」という質問に対する高畑監督の返答は「地球が良いと言っているつもりです」だった。

この高畑監督の返答のポイントは「地球が」という表現であろう。かぐや姫はそもそも「地球」そのものに憧れて地上に降り立ったのだが、彼女が食らったものは「人の世」の苦しみだった。この錯誤が作品には描かれているということになる。

話しは地井さんに戻るが、どうも制作サイドが求めたものは「地井武男の素」みたいなもので、翁を「演じる」ということではなかった。ただそれって俳優に対して「何もするな」と言っているようなもので、無礼といえば無礼である。

それでもなお、かぐや姫(タケノコ)に対して「ひ~めおいで、ひ~めおいで」と必死に声をかけるシーンには「すごい」と高畑監督は感心していた。

やはりプレスコはプレスコで大変である。

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媼(おうな)|声優: 宮本信子

媼の基本情報

媼。翁に続いてかぐや姫を確認し、母親として育てた人物である。

父として空回る翁とは対象的に、最後の最後までかぐや姫寄り添っていた。その姿は静かでなんとも穏やかだったが、その心中にあるかぐや姫への思いは翁に負けず劣らず大きなものであった。

媼は物語のラストでようやくその感情を爆発させて「行かないでひめー!」と叫ぶ。媼の抑えてきた感情が明らかとなるなんとも切ないシーンである。

今回は「かぐや姫の物語」だったから、空回るのは翁で寄り添うのが媼だった。これが「桃太郎の物語」だったら状況は逆だったのだろうか?高畑監督が作る「桃太郎」はぜひとも見てみたかった。

捨丸(すてまる)|声優:高良健吾

捨丸の基本情報

原作の「竹取物語」には登場しないオリジナルキャラクター。野山を渡って木製の食器を作ってはそれを売って生計を立てている人々(木地師)の一員で、年齢は13歳。

かぐや姫が幼少期を過ごした場所の近くを生活圏としており、子どもたちのガキ大将だった。

捨丸本人はその頃からかぐや姫に何やら特別な思いを抱いていたようだったが、かぐや姫からは「私はずっと捨丸兄ちゃんの手下だよ!」という悲しい宣言を受けてしまう。

家族捨丸問題と羽衣伝説

そんな捨丸だが、物語の終盤で月へ帰還する運命に逆らおうとするかぐや姫との逃避行を試みる。

それだけならロマンチックなシーンで終わったのだが、問題は捨丸にすでに家族があったということだった。それ故に「家族捨丸(かぞくすてまる)」などと揶揄されるようになってしまったのだが、捨丸があのような行動に出たのには理由があるように思える。

つまり「かぐや姫の物語」と「羽衣伝説」の関係である。

そもそもかぐや姫は、月の都にいたとある人物が原因で地球に興味を持ってしまったことになっている。そしてその人物はいわゆる「羽衣伝説」として描かれてきた天女である。

きちんと言葉で説明はされていないのだけれど、映像を見る限り、かつて地上に降り立ったその天女は地上の男と良い中になっているのだが・・・その男にも子供がいる。

つまり捨丸の姿は、延々と繰り返されてきた月の民と地上人との交わりの象徴となっているということになるのだろう。どうも地上の男は、月の住人を見ると全てを捨てても良いと思ってしまうようだ。

まあ、だからといって「家族捨丸」というそしりを免れるわけではないと思うけれど。

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女童(めのわらわ)|声優:田畑智子

女童の基本情報

女童は都に引っ越してからのかぐや姫の身の回りの世話をしていた人物である。

運命に翻弄されるかぐや姫の周りをほんの僅かにほんわかさせてくれるとても大切なコメディーリリーフとして活躍してくた。声を担当した田畑さんの演技も素晴らしく、彼女がいるシーンは「かぐや姫の物語」の作品中の「救い」であった。

ただ、女童にはそういった「コメディリリーフ」以上の重要な役割と意味があったように思われる。端的に述べると彼女はもうひとりの「かぐや姫」だったということである。

その辺のことについては以下の記事にまとめている:

かぐや姫の物語】女童(めのわらわ)がラストに見せたミラクルムーブの謎かぐや姫の物語」は2013年に公開された高畑勲監督による劇場用アニメーション作品である。 「竹取物語」を原作としつつも、かぐや姫...

女童という存在は「かぐや姫の物語」において、どういった意味をもっていたのだろうか?

相模(さがみ)|声優:高畑淳子

相模の基本情報

相模はかぐや姫が都に引っ越してからの家庭教師である。彼女はかぐや姫を「一流の女性」に育てるために小さな所作から琴(実際は古筝)の教育を施そうと奮闘する。

「かぐや姫の物語」のかぐや姫は、地球そのもののありようを愛している存在なので、「人の世」が偶然作り出したマナーなどには全く興味がない。そのために相模をずっと困らせているのだが、なぜか翁が現れると極めてすぐれた所作を見せるし見事に琴を演奏してみせる。

なぜそんなことができるのかといえば、彼女が月に暮らしているときにそういった所作や技術を身に着けていたからということになるだろう。

ただポイントになるのは、なぜかぐや姫が愛した「多様な地球」に人の世が含まれていないのか?という問題である。

その疑問の答えがあるとすれば「人の世で苦しむのは人だから」ということになるだろう。結局「かぐや姫の物語」はどうしようもなく人の世で苦しむ人の物語だったとまとめることも出来る。まあ、結果的に描かれたことは「否応なしに苦しむ女性」の物語だったのでなかなかにしんどかったが、同じ女性である相模がかぐや姫の望まない未来を作ろうとしたことはなんとも皮肉なことであった。

しかし相模は悪くない。彼女も彼女なりに「否応無しの状況」と戦い続けた結果として、あそこにいたのだから。

5人の公達

「かぐや姫」あるいは「竹取物語」と聞いてまず思い出すのは5人の公達の物語だろう。「かぐや姫の物語」においてもちゃんと登場しているが、原作とは状況が僅かに異なっている。「竹取物語」で5人の公達に無理難題を出したのはかぐや姫だったのだが、「かぐや姫の物語」では男どもが勝手に言いだしたことになっている。結果的に悲劇的な末路を迎えることは変わらないけれど。

公達①:車持皇子(くらもちのみこ)|声優:橋爪功

映画本編で存在しない宝に関して最初に言及した戦犯、上の画像の一番左。見栄を張って対抗しようとした他の連中も悪かったが、こいつがもう少し慎ましいことを言っていれば状況はもう少し変わったかもしれない。彼のプレゼンのセリフは

もし あなた様を我が妻とすることができたならば それは かの蓬莱(ほうらい)の山にあるという 銀の根 黄金の茎 白き玉の実をつける宝の枝をうるがごとき幸せ

であった。かぐや姫からこの「蓬莱の玉の枝」をとってこいと言われたわけである。ちなみに蓬莱とは中国で仙人が住むとされている場所の1つで他には「方丈」(ほうじょう)、「瀛州」(えいしゅう)、「岱輿」(たいよ)、「員?」(いんきょう)という場所があるそうな。

3年後、彼は偽の「蓬莱の玉の枝」をかぐや姫のもとに届け嘘八百を並べる。しかしそこに偽物を作った職人たちが「代金を支払え!」と現れる。本人は嘘がバレたと気づいてそそくさと逃げてしまい、結局代金はかぐや姫が立て替えることになった(嬉しかったので立て替えてあげた)。

原作では褒美をもらった職人たちが、帰り道に車持皇子に血反吐を吐くまで暴行される様子が描かれる。しかもせっかくもらった褒美も奪われてしまう。「かぐや姫の物語」においてこの描写はないが、おそらく同じ運命をたどったと思われる。

公達②:石作皇子(いしつくりのみこ)|声優:上川隆也

車持皇子についで発言した人物。精悍な顔立ちで、声を担当した上川さんのいい声もあいまって「もてる男」であることがひと目で分かる。そんな彼は

かぐや姫様が私の妻になってくださるならば 私はあなたを天竺に伝わる仏の御石の鉢と思い 朝夕御前にぬかずき 宝のように崇め奉るつもりです

であった。

さて、イケメン石作皇子の作戦は他の公達とは少々趣が異なっていた。彼が持ってきたものは偽の「仏の御石の鉢」を持ってきたのではなく、一輪の花だった。そこからとうとうと「愛の言葉」を並び立て、「真心勝負」を演じてみせた。

自分のことを「もの」として所有しようとする他の公達と異なる思いを感じ取ってしまったかぐや姫は、一瞬心を動かされかける。しかしそこへ現れた石作皇子の正妻の機転によって、かぐや姫は危機を脱することになる。

「竹取物語」では、石作皇子は一応鉢を探すのだが、どこぞの山寺見つけた鉢をかぐや姫に手紙(歌)と共に渡すのだが、何ということもなく振られてしまう。原作ではもっとも工夫のない男だったが、「かぐや姫の物語」では一矢報いるとこまでは来ている。非情に惜しかった。

公達③:阿部右大臣(あべのうだいじん)|声優:伊集院光

3人目の男である阿部右大臣は、おしろいの巨漢として描かれている。声優の伊集院光さんの名演もあり、極めてコミカル(あるいは滑稽な)人物として描かれている。そんな彼は

かぐや姫様 私にとってあなたこそは 火にくべても決して燃えず 汚れだけが焼け落ちて 炎の中で一層輝きを増す 火鼠の皮衣 汚れなき姫は 唐土にあると伝え聞く まさにそのような得難き宝です

と語った。彼も偽物をかぐや姫のもとに届けるが、「目の前で燃やしてみせろ」という至極まっとうなことを言われて、見事に討ち死にした。

公達④:大伴大納言(おおとものだいなごん)|声優:宇崎竜童

4人目の男である大伴大納言は眼光鋭く猛々しい人物として描かれている。宇崎竜童さんの声もその印象に拍車をかけている。そんな硬派な男がかぐや姫を落とすために、

私にとってのかぐや姫様は 龍の首にかかるという五色に輝く玉よりもさらにさらに燦然と光り輝く宝物よ!

と力強く語っていた。彼はその武士(もののふ)として本分にしたがい、真面目に龍の首の玉を取りに行ったが結局失敗してしまうその失敗にこりで、彼はかぐや姫を手に入れることを諦める。

これは大体原作と同じだが、「竹取物語」では、まずは部下に命令して龍の首の玉を取りに行かせるところから始まる。だが、どうにも拉致があかず自らが龍を探すために船で海に出るで、こっぴどい目にあい作戦を中止するのである。

公達⑤:石上中納言(いそのかみのちゅうなごん)|声優:古城環

最後の男の石上中納言は、なんとも気弱な男として描かれている。声優の古城さんはジブリの撮影スタッフである。なぜ抜擢されたかはわからないがやたらとアフレコがうまいと個人的には思う。そんなヨワヨワ男だが、彼なり語ったことは

ぼ 僕にとってのかぐや姫様は もっともっと温かい 安産の守りともなる燕の子安貝 抱かれて大切に大切に温められた宝物なのです

であった。ちなみに「燕の子安貝」は燕が産み落とすとされた伝説の貝である。もちろん燕が貝を産むなどということはないのだが、どうやら燕は我が子のために貝を巣に運ぶことがあるらしい。この件に関しては「ツバメの親はヒナに貝殻を運ぶ(外部リンク)」に詳しく書かれている。実際に産むわけではないが、石上中納言は一番真実に近いところにいたということだろう。実に惜しかった。

そんな石上中納言は、原作においても「かぐや姫の物語」においても最も悲劇的な末路を迎えた人物である。つまり、死んでしまう。

彼は燕の巣に手を伸ばしている最中に転落し腰の骨を折る大怪我を負う。ある程度は生きながらえたのだが、結局はその怪我が原因で死んでしまう。

なんとも大きな悲劇なのだが、原作のかぐや姫は

これを聞きて、かぐや姫、少しあはれと思しけり

と彼の死に関してはあまり責任を感じていないようだった。一方で「かぐや姫」の物語においては、姫に大きな影を落とすことになる。

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御門(みかど)|声優:中村七之助

御門の基本情報

物語の終盤に登場し、かぐや姫が月に帰る決定的な原因となった人物。「かぐや姫の物語」という文脈では最大の戦犯だったかもしれない。

ただ、原作の「竹取物語」では、かぐや姫がたった一人見つけることができた「大切な人」であり、「かぐや姫の物語」における捨丸の立ち位置にいることになる。原作ではなんと3年に渡って「文通」を交わしているが、もちろんそれだけで終わったとは思えない。いずれにせよ、地上に落とされたかぐや姫にとってはほんの僅かな「至福の時」だったのだろう。

原作と本編の差が何故生まれたのかは高畑監督に聞く以外に手はない。しかし想像することは出来る。以下のようなステップを踏めば御門の描かれ方の変化を理解できるのではないだろうか:

  1. もともと月の民であるかぐや姫が地球の男に興味を持つ理由がない。
  2. したがって5人の公達の申し出を完全に拒否った。
  3. と考えると、原作で御門と「いい仲」になったと表現されているのは時代性が生んだ「忖度」にほかならない。
  4. したがってかぐや姫が御門と「いい仲」になるわけがない。

唯一の矛盾は捨丸の存在であるが、それにはきちんと理由が存在している。つまり、捨丸と過ごした日々そのものがかぐや姫にとっての「もっとも美しい日々」であり、その「美しい日々」の中にいたからこそ捨丸に特別な感情を抱けたのである。

ただ、このように考えたからといて、御門を責めることもできない。彼だって望んで日本の頂点に立ったわけではない。少なくともその血筋を否定することはできなかった。5人の公達たちもそうであったように、本編に描かれたすべての存在が「どうしようもないなにか」に駆り立てられていたのである。

5人の公達を駆逐したかぐや姫が、本当は自分を望んでいると考えたことも「だれも自分を拒否しない」という呪いをかけられた天皇の苦しみとも言える。結果的に彼はかぐや姫からこっぴどい拒絶を受けているが、それは呪いからの開放だったかもしれない。

一方、呪われたままのかぐや姫は月に帰るしかなかった。原作が「竹取物語」である以上、その流ればかりは否定できなかったのだろう。そんなかぐや姫に捨丸という存在を提供したことは、高畑監督の「心意気」だったのかもしれない。つらい日々を過ごしたかぐや姫に、1つくらいは「美しい日々」があってもいいじゃないかと。

皆さんにもそんな「美しい日々」があったのではありませんか?

まあ、個人的に興味があるのは「皆さんの日々」ではなく「高畑監督の日々」である。高畑監督はどんな「あのころ」を思い出しながら「かぐや姫の物語」を作っていたのだろう。だれか知らねえかな。

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斎部秋田(いんべのあきた)|声優:立川志の輔

斎部秋田の基本情報

かぐや姫の名付け親にして、五人の公達がかぐや姫獲得競争に打って出るきっかけを作った人物。

当初は彼自身、翁や姫のことを大した存在とは思っていなかったが、かぐや姫をひと目見た瞬間に彼が失ってしまった「男」が復活するような思いにかられた。姫の年齢を考えるとなんとも不気味な話ではあるのだが、彼のかぐや姫に対する反応は月の民である彼女自身が持ってしまった特別な「なにか」が表現されている。

もちろんその「なにか」を彼女は望んでいないのだけれど、持ってしまっているのである。斎部秋田くらいの老人でも狂いそうになったのだから、それ以外の男どもはそれこそ狂ってしまうのだろう。

月の王と女官|声優:朝倉あき(女官)

月の王と女官の基本情報

月からかぐや姫を迎えに来た一団のボスとその部下。

ボスである月の王はただぼうっとかぐや姫を見ていただけだったが、女官は天の羽衣をかぐや姫に手渡すために言葉を発する。

この二人を始めとする月の民が現れた瞬間は、見ているこちらが異世界に連れていれていかれるような不思議な感覚に包まれた。あの感覚は映画館で見ないとわからないと思うのだが、登場シーンで流れた「天人の音楽」はまさに傑作であろう。以下の記事で高畑監督が「天人の音楽」を最初に発注するシーンにいて書いてある:

かぐや姫の物語」で、かぐや姫は罪も犯していないし罰も受けていない?前回は「かぐや姫の物語」における「姫が犯した罪と罰」についての記事を書いた。そこでは、かぐや姫が本当に罪を犯し、罰を受けたという前提で考...

まあ「発注」などとは言えない程度のことしか発言していないのだが、高畑監督と久石譲さんの間でどのようなやり取りがなされてあの音楽が生まれたのかは興味深い。ほんとに奇妙な音楽だよね。

かぐや姫の物語」の英語版声優一覧

キャラクター名 声優
かぐや姫 クロエ・モレッツ
捨丸 ダレン・クリス
ジェームズ・カーン
メアリー・スティーンバージェン
相模 ルーシー・リュー
女の童 ヒンデン・ウォルチ
斎部秋田 ジョージ・シーガル
石作皇子 ジェームズ・マースデン
阿部右大臣 オリバー・プラット
大伴大納言 ダニエル・デイ・キム
御門 ディーン・ケイン
車持皇子 ボー・ブリッジス
石上中納言 ジョン・チョー

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「ジブリ作品」と聞かれたら「平成狸合戦ぽんぽこ」と答えることにしている。

この記事で使用した画像は「スタジオジブリ作品静止画」の画像です。


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