「コクリコ坂から(スタジオジブリ公式)」は2011年に公開された宮崎吾朗監督による劇場用アニメーション作品である。
今回は本編中に登場した個人的名言、名台詞を集めてみた。
とりあえず、私が個人的に思う「コクリコ坂から」の3大名言、名台詞を挙げておくと、
- お前は俺の息子だ。
- エスケープか、青春だな。
- 立花と澤村の息子と娘に会えるなんて嬉しい、ありがとう。こんな嬉しいことはない。
である。この中でも「お前は俺の息子だ」はグッと来たね。皆さんはどうだろうか。
また、名言や名台詞は通常とは異なる言い回しが用いられることも多く「英語でどう言ってるんだろう?」と疑問に思ったことがあったので、英語表現についても調べてみた。ちなみに「コクリコ坂から」の英題は・・・
となっている。「コクリコ」はフランス語での「ヒナゲシ」であり、「poppy」は英語で「ケシ」を意味する(「ヒナゲシ」は「common poppy」や「corn poppy」となる)。
*以下の英語表現は市販のBlu-rayの字幕をもとにしています。また吹替版も参考にしています。
「コクリコ坂から」の名言、名台詞と英語表現
松崎海の名言、名台詞と英語表現

「嫌いになったのならはっきりそう言って!」
英語表現If you don’t like me, just say so.
If you don’t like me, just say so.
どう考えても「いい感じ」になっている風間が、どういうわけかそっけない態度をとっている状況に対して海が風間に対して放った台詞。
もちろん、この台詞を放った海の内面に「自分を嫌っている」なんてことがあったはずがない(あっても1%だろうか)。この台詞の言わんとする所は本来「もう私のこと好きなんでしょ、なら好きって言ってよ」となるだろう。
ところがどっこい、その返答は「自分たちは兄弟」というものだった。
海としても風間のそっけない態度にむしろ「いい時期」と思ったのだろうし、本来その判断は肯定されるべきものなのだが、それがだれも想定できない返答を生むことになってしまった。
ただ、最終的な風間の「どうしよもない」も、極めて分かりづらい愛の告白だったと言えるだろう。
「私、風間さんが好き。血がつながっていても、たとえ兄妹でも、ずーっと好き」
英語表現I’m in love with you, Shun. Even if we’re related, even if you’re my brother…
I’m in love with you, Shun. Even if we’re related, even if you’re my brother…
主人公としての海はなんとも内省的というか抑制的な姿を物語のスタートからず~っと我々に見せてきたわけだが、ここでその感情が爆発させている。
それはそれで素晴らしいことなのだが、ここで特筆すべきことは、この台詞は路線バスの停留所で発言されたという事実だろう。
単純な愛の告白ならどこでいたしてもらっても構わないのだが、「血が繋がってても」を町中で叫ぶというのは「公共の福祉」に反するのではないだろうか?
あの瞬間、誰も周りにいなかったことを祈るばかりである。
風間俊の名言、名台詞と英語表現

「古いものを壊すことは、過去の記憶を捨てることと同じじゃないのか!人が生きて、死んでいった記憶をないがしろにするということじゃないのか!」
英語表現Destroy the old and you destroy our memory of the past. Don’t you care about the people who lived and died before us?
Destroy the old and you destroy our memory of the past. Don’t you care about the people who lived and died before us?
結局この台詞がこの作品のテーマの一端を表明しているのだろう。
風間これを言えた理由も、海がその言葉に影響を受けた理由も、ふたりとも忘れたくない「死んでいったもの」を抱えているからである。
ただ一方で、少々うがった見方も出来る。
「コクリコ坂から」の監督は宮崎吾朗だが、脚本はその父 宮崎駿が担当しているのだが、この台詞は宮崎駿自身の言葉だったのではないだろうか。
2008年の「崖の上のポニョ」が公開された段階で宮崎駿は67歳。すでに「古いもの」と認識されていてもまったくおかしくない状況になっていた。実際に自分の老いを誰よりも認識していただろう。
そういった状況に対する不満や批判を「自分の映画」でやるのは憚られるが、これは息子の映画なので脚本担当として「えいやっ!」とやっちゃった、というように思えてならない。
もちろんこれは私の妄想に過ぎないのだけれど、脚本が宮崎駿であるという事実を思うとき、この台詞に何やら思いを馳せてしまうのはしょうがないことではないだろうか。
「どうしようもないさ。知らん顔するしかない」
英語表現We forget whatever it was we felt about each other.
We forget whatever it was we felt about each other.
自分と海が血の繋がった兄弟であるという事実(ではなかったが)を伝え「どうすればいいの」と問われたことに対する返答。
なんとも切ないシーンではあるのだが「何も変わらないさ」ではなく「どうしようもないさ」という表現が絶妙である。
この言葉の裏を返せば「どうにかしたいという意志が実はある」ということになのではないだろうか。
つまりこれは、世界一遠回しで分かりづらい愛の告白ということが出来るだろう。
なんとも慎ましい男である。
水沼史郎の名言、名台詞と英語表現

「閣下、あの2人に人生上の重大事が発生しました。2人は駆けつけねばなりません。」
英語表現Please excuse them, sir. Something very important is happening to both of them.
Please excuse them, sir. Something very important is happening to both of them.
「コクリコ坂から」のポイントポイントで顔を出した風間俊の友人水沼。友人というよりは親友と表現すべきなのだろう。
本編を通じて「友だちがい」のあるやつであることはその行動によって示されてはいたが、この台詞はダメ押しであった。
友人にするなら水沼のような男を友人にすべきであるし、大事な友達に対しては水沼のようであるべきだろう。
まあ、結局は風間俊の人間力が水沼を引き寄せたのだから、日々を正直に生きなければ、水沼のようなやつには会えないのだろう。
徳丸理事長の名言、名台詞と英語表現

「『エスケープ』か、青春だな。」
英語表現Escape… It’s great to be young.
Escape… It’s great to be young.
「コクリコ坂から」に「こういう人でありたいな~」という大人が多数登場する。その中でも完全に良いとこもっていったのが徳丸理事長であろう。
ただ、本編中でも語られているようにカルチェラタンの取り壊しは理事会の決定である。つまり、徳丸理事長もそれに同意していたのである。もちろん新棟建設の予定などない。
そんな徳丸理事長を動かしたのは、物語の主人公 海であった。
正確には、海を残して亡くなってしまった澤村雄一郎の思い、そしてその想いに応えるように立派に育った海の姿に徳丸理事長は「やられた」ということになるだろう。
とはいえ、そういう「思い」に応えようとしてくれるあたりは「憧れる大人」という言い方が出来るだろう。
松崎花の名言、名台詞と英語表現

「素敵な人ができて、あなたが旗を上げなくてすむようになったらいいのにねえ。」
英語表現I hope you find someone wonderful soom. Then you won’t need those flags anymore.
I hope you find someone wonderful soom. Then you won’t need those flags anymore.
毎朝父を思い旗を上げ続ける孫の海を心配した松崎花の台詞。
本来この台詞はこの物語の行く末、結末を暗示するものである。つまり、海は誰か素敵な人を見つけて旗を揚げなくなることを暗示している・・・はずなのだが、結果的にはそうならなかった。
海は結局物語のラストで再び旗を揚げている。しかしそれは全く悲しいことではなくなっている。花さんも海の姿に悲しむことはなくなっているだろう。
つまり、物語のスタートでは亡き父という過去に縛られ旗を揚げているが、物語のラストでは俊という今この瞬間に対してもその旗を揚げている。
海の祖母の台詞はどう見ても伏線ではあったが、それがそのまま回収されることはなかった。でもそれはとても幸せなことだったと思う。
海は今を生きつつ、過去も忘れていないのである。
風間明雄の名言、名台詞と英語表現
「お前は俺の息子だ。」
英語表現You’re my son.
You’re my son.
個人的には「コクリコ坂から」の中でも一番好きな台詞かもしれない。
風間明雄はなんとも淡泊というかそっけないというか、いわゆる「昔の男」という感じの人物だが、俊への愛情が深いことが分かる。
こういう男で自分はありたいと思わせてくれた台詞であった。
何れにせよ、俺に子供はいないけど。
小野寺善雄の名言、名台詞と英語表現
「立花と澤村の息子と娘に会えるなんて嬉しい、ありがとう。こんな嬉しいことはない。」
英語表現Meeting you two is like seeing my old friends again. Thank you both. I’ve never been so happy.
Meeting you two is like seeing my old friends again. Thank you both. I’ve never been so happy.
「コクリコ坂から」を締めくくった台詞。何故かこの台詞を聞くといつも涙が流れてしまう。
その理由を言語化するのはとてもむずかしいのだが、おそらくは小野寺が見た海と俊の立派な姿がその根本的な理由であると思う。
海と俊(そして我々もそうなのだが)は、賢明にその命を繋ごうとした人々との思いの結晶としてそこにいる。しかも、海と俊はなんとも立派に育ってくれたわけである。
そんな立派に育った2人の姿に、「思いが実った」と我々は思うのではないだろうか。
「コクリコ坂から」は賢明に命を繋いだ人々の物語である。だから、その思いが結実したことに涙を流すのである。

この記事で使用した画像は「スタジオジブリ作品静止画」の画像です。
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